食道がんの症例写真と解説

内視鏡内科 消化器内科(胃腸内科)内科

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食道がんの症例写真と解説

内視鏡の症例 食道がん

画面右下に白い粒状の小隆起と、やや陥凹した赤みの部位が見られます。 早期食道がんの画像です。
早期食道がんのNBI拡大画像です。全体的に茶色に見えることと、内部に縮れた血管模様が観察されます。
進行食道がんの画像です。 食道がんが食道内腔を塞いでしまい、奥の内腔を確認できません。
食道の正常像です。
食道は元々、このようにまっすぐに胃へと伸びています。

特に愛煙家と酒客の皆様へ、食道がんにご注意

特に愛煙家と酒客の皆様へ、食道がんにご注意

煙草やお酒がやめられない方も多いと思います。ストレス社会ですので、一瞬の安らぎは必要です。この習慣との付き合い方は、患者さんそれぞれの思いがあると思います。内視鏡専門医の役目は、食道がんのリスクと内視鏡検査の必要性をお知らせすることだと思います。

気になる、食道がんの症状についてはこちら

食道がんになりやすい患者さん

食道がんになりやすい患者さん

飲酒と喫煙は食道がんの発症率を高めます。飲酒により体内に生じるアセトアルデヒドは発がん物質です。また喫煙により発がん性はさらに加速されます。食道がんは男性で多い傾向です(男女比約5対1)。その他、加齢や、熱い食事の嗜好、逆流性食道炎が関係すると報告されています。

食道がん早期発見のための胃内視鏡

食道がん早期発見のための胃内視鏡

胃内視鏡を用いて食道を観察します。胃内視鏡は、必ず食道を通過して胃に挿入されます。また胃内視鏡が体外へ抜かれるときにも食道を通過しますので、最低2回は食道を観察することになります。当院では、この食道観察を3回に増やすことにより食道がんの早期発見に努めています。その理由は、食道がんは進行の速いがんであるからです。食道がんも内視鏡治療が可能ながんではありますが、内視鏡治療で治癒されたかどうかは、胃がんや大腸がんよりも厳しい基準で判定されます。胃がんや大腸がんで治癒切除と判定されるがんの進行度(粘膜下層表層)であっても、食道がんではリンパ節転移を起こしやすいと判定され、追加の外科手術が推奨されます。食道のごく表層のがんでないと、内視鏡治療のみで治療完結することが難しい、ということになります。

このため食道がんは、胃がんよりも早い段階での早期発見が必要と考えられています。ちなみに、食道がんの外科手術は、食道が心臓の後ろに位置することから、開胸術が選択されることがあります。食道がんの手術は、患者さんへの影響が大きな手術の一つです。

早期発見の基礎の基礎、通常光観察

内視鏡での通常光観察、それはルーチンワークではありますが、どんな仕事でも基礎を充分にトレーニングし発揮することは、最も大事なことです。厳しいトレーニングを受けた、国立がんセンターでの指導で今も心がけていることは、「地図を描くように食道を撮影すること」です。食道は、解剖学では真っ直ぐに喉から胃までつながっている臓器です。しかし、気管支や心臓、背骨や横隔膜など隣り合う臓器によって、病変の位置判定や内視鏡治療の難易度が変わります。通常光観察での食道撮影一つで、専門技量が推し量れることになります。一般に早期の食道がんは、淡く赤い広がりと捉えられます。その赤い広がりの中に、白い粒状の構造があったり、赤みの強い陥凹した部位を指摘するなど、食道がんの進行度や組織型などの情報を読み取る技術も内視鏡専門医には必要なことと思います。

食道のNBI観察法

胃内視鏡での十分な通常光観察ののちに、オリンパス社が開発したNBI観察法を行います。当院はオリンパス社最上位機種、EVIS LUCERA ELITEを採用しました。これまで内視鏡専門医としての経歴で、多くのがん診療拠点病院で内視鏡検査に携わっていた頃より、このオリンパス社最上位機種を使用しておりました。使い慣れた内視鏡システムを使用することで、これまでのキャリアと同様の検査クオリティを提供できると思います。このシステムでは、ボタン一つでNBIへと切り替わります。NBIとは、狭帯域画像強調と訳されますが、日本語に直してもピンとこない医学用語の一つです。簡単に説明します。胃内視鏡から投射された光は、通常は赤、青、緑の光で構成されます。NBIではこのうち赤を除き、青と緑の光で観察する方法です。がん組織は増殖スピードが速いことから、血管が豊富になります。NBIでは、血管内の赤血球を青色の光が捉えやすくなります。このため、がん組織を内視鏡画面で見つけやすくなるという仕組みです。このNBI観察法が最も力を発揮するのが、食道です。食道がんはNBI観察法では、茶色に映ります。以前は、食道がんを見つけるためにはルゴール液という刺激の強い薬剤を撒いて観察していましたが、その薬剤の刺激性の強さから、一般的な胃内視鏡検査では患者さんの負担が大き過ぎると考えられています。このルゴール液を用いる方法は、現在でもその正確性から、手術前や手術後に行うことが多くなりました。当院の胃内視鏡では、このNBI観察法を必ず行い、食道がんの早期発見に努めています。

組織生検法

食道がんを疑う病変があれば、胃内視鏡から採取器具を出して、3mmほどの組織片を採取します。この組織片は、ホルマリン液に浸した後、顕微鏡検査に提出します。食道がんは顕微鏡検査の診断が難しい病気の一つです。熟練した病理専門医により良性悪性が診断されます。判定まで2週間ほどかかりますが、がん組織を判定する最も重要な検査法です。ワーファリンやアスピリンなど、血液をサラサラにする作用の内服薬を服用されている患者さんには、個別の対応が必要ですので、受診時に必ず申し出てください。

まとめ

    ・お酒や喫煙を好まれる方は、食道がんの危険因子をお持ちです。
    ・食道がんは進行の速いがんの一つです。早期に発見するためには定期的な胃内視鏡を受診されることをお勧めします。
    ・食道がんの早期発見のためには、熟練した通常光観察、NBI観察法、組織生検法が必要です。内視鏡専門医による胃内視鏡をお勧めします。