下剤を飲まない大腸内視鏡

内視鏡内科 消化器内科(胃腸内科)内科

も15:00まで診療 TEL 0798-56-8480

西宮市南越木岩町6-7ラポール苦楽園2階

  • TOP
  • 下剤を飲まない大腸内視鏡

下剤を飲まない大腸内視鏡

下剤を飲まない大腸内視鏡

下剤を飲まずに大腸内視鏡ができるのはなぜ?

水浸法による無痛大腸内視鏡挿入

下剤を飲まずに大腸内視鏡ができるのはなぜでしょうか?その理由を説明します。
元々、胃内視鏡を含むすべての内視鏡装置には、水を通すルートが内蔵されています。このルートに水を流すことで胃の中の汚れている部位を洗浄することができます。下剤注入法とは、この水を通すルートに、本来患者さんに飲んでいただく下剤(腸洗浄剤)を流すことで、つらい下剤を飲むことを回避する方法です。

下剤を飲むことを回避する方法

大腸内視鏡で使用される下剤は、全量で最低1リットルです。これを胃の中に注入すると、流石に胃は一杯に膨れてしまいます。そのため、胃内視鏡で注入する下剤は胃の奥にある、十二指腸で注入します。
元々、胃は食べ物を貯めておくダムの役割を担っています。しかし、十二指腸から大腸までは胃のようなダムはありませんので、一気に下剤は腸の中を下っていきます。その洗浄効果は目を見張るものがあります。実際、下剤注入法で腸内を洗浄した後に大腸内視鏡を行うと、大腸の中がつるつるになっています。

当院が提供する下剤を飲まない大腸内視鏡は、後に説明する、水浸法大腸内視鏡挿入法、当院独自の麻酔投与法をベースにしており、方法論はすべてが相互に関連しています。どれ一つをとっても容易に模倣できる技術ではなく、十分な修練と経験を必要とする、高度な内視鏡技術です。

「下剤を飲まない大腸内視鏡」の流れは?

下剤を飲まない大腸内視鏡の流れは、以下の通りです。
まず胃内視鏡を行います。胃の観察をした後に、十二指腸で下剤注入を行います。下剤注入後、トイレを往復していただきます。トイレがきれいになったら、大腸内視鏡を行います。

大腸内視鏡の流れ

1
2
3
4
5
6
7
1
下剤を飲まない大腸内視鏡では、事前診察が必要です。インターネットまたは電話での予約が可能です。

超音波検査

2
事前診察当日は、腹部診察、腹部エコー、血液検査を行います。また食事指導も行います。腹部エコーは、腸閉塞の有無を確認するために行います。絶食は必ずしも必要ではありませんが、絶食で来院されると、すい臓や胆のうの病気が検出しやすくなります。大腸内視鏡では、ポリープ切除など手術に関連する処置を同時に行うことがあります。事前の全身検索が必要です。どうぞご理解の程お願いいたします。

下剤を飲まない大腸内視鏡

3
通常は、内視鏡検査3日前より、酸化マグネシウムを服用開始します。また1日前には腸を動きやすくする薬を内服します。これは、下剤注入の効率を上げるために行います。これらの薬剤が効きすぎる、腹痛が生じるときには自己中止または減量していただいて構いません。
4
検査当日は、絶食でお越しください。飲水は1時間前まで自由にとってください。
5
来院後、1回使い切りの検査着に着替えていただき、胃内視鏡の準備を始めます。薬剤を投与するための静脈ルートを腕に作成します。1回使い切りのマウスピースを装着していただきます。
6
まず胃内視鏡を行います。胃の観察をした後に、下剤注入を行います。胃内視鏡は、原則的に口から麻酔使用の胃内視鏡を行います。麻酔は、早く効いて早く覚めるものを使用しますので、胃内視鏡後はすぐに目が覚めます。トイレに行きたくなる頃にはしっかり歩行ができます。下剤注入に要する時間は、概ね4分程度です。下剤注入をする前に、通常の胃内視鏡観察を行いますので、全体の検査時間は約13分かかります。
7
効き目が早く覚めが早い鎮静剤を使用しますので、下剤注入後にはふらつくことなくトイレに行くことができます。院内で経過を見ながら、院内のトイレを使用していただきます。
8
下剤注入後、標準的には3~4時間ほどでトイレがきれいになったら、麻酔を使用した大腸内視鏡を行います。大腸ポリープも切除可能です。
9
大腸内視鏡終了後、麻酔が十分に覚め、歩行が問題ない状態が確認されたら、外来にて結果説明を行います。
10
胃内視鏡や大腸内視鏡で採取された組織やポリープの結果は、後日お知らせします。原則的にお電話でお伝えします。来院して結果説明を受ける必要はありません。

※ 検査当日の所要時間は平均5時間弱です。


「下剤を飲まない大腸内視鏡」の成績:毎月更新中

  • 2018年9月1日開院~2024年3月31日、2,119名の「下剤を飲まない大腸内視鏡」(下剤注入法)を提供しました。大腸内視鏡を受診された患者さんのうち、下剤注入法を選択された方の割合は、30.0%(男性19.5%、女性36.9%)でした。
  • 受診いただいた方の平均年齢は53.4歳、男性546名、女性1,573名でした。
  • ほぼ全例で、胃内視鏡を使用した下剤注入が安全に完了しました。2名で下剤注入中に逆流現象が出現し、300mlおよび500mlほど注入後に中止となった方がいました。誤嚥などの合併症はありませんでしたが、麻酔から覚めた後、必要量の下剤を飲んでいただくこととなりました。
  • 平均12.6分で、麻酔使用の胃内観察と下剤注入が完了しました。
  • 84.9%で大腸は完全洗浄状態となり、残りの方も大腸内視鏡の挿入と観察が問題ない洗浄状態となり、全例で全大腸内視鏡検査が完了しました。
  • 下剤注入後、平均3時間0分で大腸内視鏡を開始しました。最短で45分、最長では6時間40分でした。通常の下剤を飲む方法であると、平均4~5時間程度かかります。
  • 98.8%で不快な症状が全くありませんでした。4名で一時的な吐き気の訴え、12名で注入後に嘔吐、6名で腹痛(大腸がんの狭窄症状を含む)、1名で全身倦怠感、3名で排便前の腹部膨満感がありました。1名(70歳代後半女性)に下剤注入後、意識レベル低下(開眼するが受け答え不能)があり、点滴治療を行い、速やかに回復されました。下剤投与による脱水症状と思われます。
  • 入院を必要とする、重篤な合併症は皆無、0%でした。

    痛みを訴えられた方

  • 胃内視鏡では、3名で検査中止の方がいらっしゃいました。3名すべて、睡眠時無呼吸症候群を併発した患者さんでした。酸素投与のみ行い、3名は元気に回復され、徒歩にて帰宅されました。
    睡眠時無呼吸症候群の方には、当院の胃内視鏡(麻酔使用)は不適です。いびきをかく、睡眠中に呼吸が止まるなどの、睡眠時無呼吸症候群の症状のお持ちの方は、ご注意ください。
    CPAPなどの治療中の方はこの限りではありません。

大腸内視鏡では、麻酔関連の検査中止症例はありません。

「下剤を飲まない大腸内視鏡」の費用は?

腸洗浄剤注入法による、苦しい下剤服用からの解放

「下剤を飲まない大腸内視鏡」の費用は、保険診療で行う場合、胃内視鏡と大腸内視鏡の合計の保険診療費、及び下剤注入に関連する諸費用となります。
実際には、13000~30000円程度必要です。組織採取やポリープ切除が追加されることで診療費が変わってきます。

下剤を「飲まない方法」と「飲む方法」ではどちらがよいか?

下剤を飲む方法もOK

夙川内視鏡内科まえだクリニックではもちろん、従来方法通り、下剤を自力で飲んでいただく患者さんがいます。70%の患者さんが下剤を自力で飲む方法を選択されています。下剤を服用できる患者さんは、下剤を飲んで大腸内視鏡に臨んでいただきたいと思います。

下剤を飲まない大腸内視鏡(下剤注入法)は当院が提供する、特徴的な医療サービスの一つですが、義務ではありません。

女性で体が小さい方、または水分を多くとる習慣がない方には、下剤を飲まない大腸内視鏡(下剤注入法)がよいと思われます。また下剤(腸洗浄剤)飲用に不安を持たれている方にもよいと思います。

男性で20-50代の働き盛りの方、ビールなどのアルコール飲料がお好きな方、スポーツマン(スポーツウーマン)で水分摂取を多くとることに抵抗のない方には、下剤を飲用して大腸内視鏡を受けることが可能と思います。

下剤注入法では、胃カメラで胃の中を観察した後、下剤を注入し、起きたらトイレです。トイレがきれいになったら、大腸内視鏡を行います。院内滞在時間が4~5時間かかります。

一方、下剤を自宅で服用して来院すると、胃カメラと大腸内視鏡を連続して行います。自宅で下剤を自力で飲んで、胃カメラと大腸内視鏡を連続で受けると、院内滞在時間は1~2時間程度です。

下剤を飲む方法もOK

麻酔の量を比べると、自宅で服用して胃カメラと大腸内視鏡を連続で受診した方では、トータルの麻酔投与量が、下剤注入法より35%ほど少なくて済みます(2020年10月当院統計データ)。

1
2
3
4

院長前田個人としては、下剤飲用に全く抵抗がないので、必ず飲用して大腸内視鏡を受診しています。私は長い拘束時間は苦手な性格です。

どこの医療機関でも「下剤を飲まない大腸内視鏡」はできる?また、そのデメリットは?

どこの医療機関でも「下剤を飲まない大腸内視鏡」を受けられる訳ではありません。日本全国でも「下剤を飲まない大腸内視鏡」、当院が提供する下剤注入法を提供する施設はまだ限られています。保険診療では下剤注入法という方法が算定できないこと、また大腸内視鏡用洗浄剤(下剤)は本来患者さん自身が自力で飲むことを想定して製造販売されていることがその原因です。

当院は、この下剤注入法(モビプレップ注入法)を、関西で初めて導入した内視鏡専門施設です。

当院が採用した下剤注入法は、東大病院(現新宿大腸クリニック)の後藤利夫先生らによって、15年前に考案され(当初はマグコロールP注入法、その後モビプレップ注入法)、すでに1万件以上の実績がある方法です。99.4%の大腸内視鏡無痛率を誇る、水浸法と下剤注入法を実践する先進施設、新宿内視鏡クリニックにて院長は直接ご指導をいただき、2018年9月以来ここ夙川苦楽園地区で実践しています。

デメリットとしては、以下のことが考えられます。

1
下剤を注入するため胃内視鏡を同日に受けないといけない。
2
下剤を注入した後に、大腸がきれいになるまでトイレに何度も行くことになるため、内視鏡検査以外に病院内に滞在する時間が3〜4時間ほど通常の大腸内視鏡検査より長くなる。

水浸法による大腸内視鏡とは

水浸法による大腸内視鏡とは、無痛大腸内視鏡挿入方法の一つです。大腸内視鏡から水を注入しながら大腸の奥へと内視鏡を進めていく方法です。

当院は、つらくない、痛くない内視鏡技術を徹底的に追求しています。その一つの答えとして、東大病院(現新宿大腸クリニック)の後藤利夫先生の開発された水浸法という技術に出会いました。

大腸内視鏡を専門とする内視鏡医として、いかに患者さんに痛みや苦痛を与えずに検査をするかをいつも考えています。自分自身でも体験する必要があると思い、様々な医師に依頼して大腸内視鏡を合計4回受診しています。残念ながら、その中には痛かった思い出もあります。水浸法という大腸内視鏡挿入術は、以下に説明することから腸にやさしい挿入方法であると実感しています。

水浸法のメリットは「痛み」の軽減。なぜ痛くないのか?

水浸法では、なぜ痛くないのでしょうか?この方法では、空気や二酸化炭素を注入する代わりに、約100mlの少量の水を大腸に注入します。透明な水を大腸に注入し、進むべき方向をわかりやすくします。
注入された水によって、大腸と大腸内視鏡との摩擦や抵抗は低くなります。すなわち、大腸内視鏡は滑りやすくなります。このため大腸内視鏡は大腸を伸ばすことなく、スルスルと終点(盲腸)まで到達します。外科や婦人科などの術後や、大腸憩室(けいしつ)などで癒着したり、硬くなったりした、挿入の難しい大腸にも有効な挿入法です。注入した水は終点に到達した後、吸引されますが、大腸を洗浄する役割もあり、病変の観察にも役立ちます。

どこの医療機関でも水浸法はできる?デメリットはある?

どこの医療機関でも水浸法を行なっている訳ではありません。関東の少ない医療機関で取り入れられている方法ですが、関西ではまだ数少ないのが現状です。

当院は、阪神間で初めて、水浸法大腸内視鏡挿入術を導入した内視鏡専門施設です。

欠点としては、水は空気より、注入したり吸引したりするのに時間がかかるため、検査時間が2〜3分ほど長くなる傾向があります。水浸法による大腸内視鏡は、痛みを感ずることが少ないために、鎮静剤なしで行われることもあります。

下剤注入法、水浸法、そして麻酔使用でさらに安楽に

下剤注入法で苦しい下剤内服を回避することができ、さらに水浸法による大腸内視鏡挿入術により、痛みのない検査を受けることができることをお示ししました。そしてさらにもう一つ、当院独自の麻酔方法を加えることで、より安楽に大腸内視鏡を受けていただくことを提案します。

当院で使用する麻酔は、早く効いて早く覚めるものを使用します。検査後にフラフラすることが少ない特徴があります。また生体モニターの情報と、複数の医療者の観察眼により、適切な麻酔状態をコントロールすることができます。胃カメラで下剤注入した後に、トイレ歩行に困らないよう、また大腸内視鏡で少しの痛みも感じないように、細心の注意をもって対処しています。当院では、欧米での内視鏡研修や、国内先進施設での研修及び臨床経験に基づく麻酔方法を実践しております。

麻酔の効き方には個人差があります。念のため検査当日には、自動車、バイク、自転車など運転はお控えください。

下剤を飲まない大腸内視鏡をご希望の皆様へ

1
心臓病、腎臓病、肝臓病をお持ちの方は、当院での内視鏡検査をお断りすることがあります。

妊娠中の内視鏡検査には対応していません

2
授乳中のご婦人は、内視鏡受診後24時間は授乳ができません。当院は、妊娠中の内視鏡検査には対応していません。

当院はバリアフリー構造や手すりの設置が十分ではありません

3
当院はバリアフリー構造や手すりの設置が十分ではありません。杖歩行や車椅子移動の方の内視鏡検査はお断りすることがあります。
4
90歳以上の患者さん 全身機能の低下が予想されます。当院での大腸内視鏡はお受けできません。救急体制の整った総合病院にて入院の上、大腸内視鏡検査をお勧めします。
5
上記を確認の上、事前受診予約をお願いします。事前受診当日は内視鏡検査は行いません。インターネット、電話で予約が可能です。メール、電話での問い合わせが可能です。当院では、腸閉塞の有無と全身状態を確認するため、事前診察の際に、腹部エコーと血液検査を行っております。腸閉塞の診断のためには、必ずしも絶食で来院される必要はありません。絶食で来院されると、胆嚢や膵臓がよく観察できることがあります。ご希望の方は、絶食でお越しください。

緑内障の方

6
緑内障の方は、麻酔や鎮静剤を使用することで眼圧が上昇し、失明する場合も あります。緑内障または緑内障の疑い・高眼圧などで眼科受診中の方は検診前に 必ず眼科主治医に鎮静剤使用が可能かをご相談ください。 眼科での事前の確認をされていない場合、 鎮静剤が使用できない場合がありますので、ご了承ください。

婦人科手術後の方ご注意

7

子宮、卵巣、帝王切開など婦人科術後で、まだ大腸内視鏡を経験したことがない方へ。初めての大腸内視鏡を受診する場合、この方法はお勧めしません。癒着が生じていることがある為です。
初めての大腸内視鏡は、通常通り、下剤を飲用して受診されることをお勧めします。


下剤を飲まない大腸内視鏡の案内

大腸内視鏡についてのQ&Aはこちら

当院の内視鏡洗浄