過敏性腸症候群の症例写真と解説

内視鏡内科 消化器内科(胃腸内科)内科

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過敏性腸症候群の症例写真と解説

内視鏡の症例 過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とはどんな病気か?

過敏性腸症候群とはどんな病気でしょうか?「大腸の粘膜には異常がないにも関わらず、便秘や下痢を起こす病気」を過敏性腸症候群と呼びます。そしてこの症状は、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いと報告されています。

よくある症状を紹介すれば、
「通勤のために電車に乗ると、必ずお腹が痛くなり、トイレのために途中下車しなくてはいけなくなる」
「会議の途中で、お腹が痛くなり、途中で退出しなくてはいけなくなる」
「大事な試験の前には、排便がなくなり、下腹が張って苦しくなる」
などです。
このように生活の質を低下させる厄介な病気とは言えますが、大事なことが一つ。
命にかかわる病気ではないこと、これは押さえておきたいポイントです。

過敏性腸症候群の原因は?

最も大きな原因は、ストレスと報告されています。ストレスは自律神経の調子を狂わせます。大腸は、脳とつながる自律神経によってコントロールされていますので、脳に与えられた心理的なストレスは大腸にも影響を及ぼすことになります。過剰に刺激を受ければ、大腸の動きは活発になって、下痢になります。また逆に、刺激が抑制されると、大腸の動きが低下して、便秘となります。

その他、細菌やウイルスによる感染性腸炎(いわゆる腸風邪)の後に、下痢が引き続いたりすることもあります。これも過敏性腸症候群の一種と考えられています。典型例として、冬に猛威を振るうノロウイルスや、鶏肉から感染するカンピロバクターが有名です。
また、抗生物質の内服によって、正常な腸内細菌が影響を受け、いわゆる悪玉菌が増加することにより、大腸が刺激され過敏性腸症候群となることもあります。

過敏性腸症候群を診断するにはどうしたらよいか

過敏性腸症候群を診断するにはどうしたらよいでしょうか?
過敏性腸症候群は、上述のように、「大腸の粘膜には異常がないのに、便秘や下痢に悩ませる病気」ですから、「大腸の粘膜の異常」を調べる必要があります。最も一般的なものとしては、当院でも提供する大腸内視鏡です。

大腸内視鏡では、内視鏡検査前に腸管洗浄剤で腸をきれいにする必要があります。検査の5時間前から最低1リットルの腸洗浄剤を飲用します。水のような排泄物が続き、透明になったら、おしりから内視鏡を挿入します。デリケートな部分ですので、当院のような麻酔使用の大腸内視鏡を選択された方が、検査への抵抗感が少なくて済むと思います。
また過敏性腸症候群の患者さんは、大腸の病気への過度な不安がうっ積していることが多いため、ご自身の大腸に内視鏡検査で大きな異常がないことがわかると、その症状が軽くなることがあります。

また、稀ではありますが、甲状腺機能異常や寄生虫が原因で排便異常が起こる場合があります。血液検査や便検査が有用となることがあります。

過敏性腸症候群を治療するにはどうしたらよいか?

では、過敏性腸症候群を治療するにはどうしたらよいでしょうか?
日常生活でストレスに苛まれているときには、まずは、ストレスのコントロールを考えましょう。ストレスを感じていない、感じていても気づかない方もいます。ストレスの感じ方は、ひとそれぞれです。過敏性腸症候群の治療に心療内科を利用する方もいます。
一般的なアドバイスとしては、生活改善、規則正しい生活の励行です。十分な睡眠をとり、繊維質の多い食事を心がけることがよいとされます。

食生活のポイントとしては、低FODMAP食、いわゆる糖質制限食が下痢症状に有効とされています。具体的には、小麦や豆類を含む食事成分が十分に消化されないまま、大腸に移動すると、大腸内で発酵して、下痢や膨満感につながるそうです。また、乳製品も大腸を刺激すると報告されていますのでご注意ください。

生活改善やストレスコントロールの効果がなかったり、実践が難しかったりする時は、症状に応じた薬物治療が勧められます。
当院でよく処方する薬剤としては、下痢に対する5-HT3拮抗薬(きっこうやく)、腹痛の緩和を目指した抗コリン薬、便秘解消のために大腸粘膜からの水分分泌促進や知覚過敏軽減を目指した粘膜上皮機能変容薬などがあります。症状に応じて、漢方薬や抗うつ薬の処方を行うこともあります。また効果は弱いものの、副作用の少ない治療薬として、プロバイオティクス、すなわちビフィズス菌や乳酸菌などを摂取することもよいとされます。
蛇足ではありますが、大腸内視鏡の診断のところで触れました通り、過敏性腸症候群の患者さんは、多くの場合、大腸の病気やご自身の症状に対する強い不安をお持ちの方が多いと思われます。あまりに思いつめると、それ自身がストレスとなり、症状の悪化を招くことがありますのでご注意ください。

過敏性腸症候群
過敏性腸症候群の大腸内視鏡画像です。がんや炎症がない所見として、ポリープなどの隆起物がないこと、血管が透けて見えるのが特徴です。「大腸内視鏡では、何の異常もないですよ」と言われたら、過敏性腸症候群の可能性があります。
過敏性腸症候群